水温10℃に達するまで、ブログの更新を中断するするつもりでしたが、コメント欄でearthさんに励まされました。今の時点で書ける書き込みを、1つ追加しておきます。「支笏湖初心者向けの解説」を目指した内容です。それから、この内容に反論がある方がいたら、是非、指摘をお願いします。内容を見直します。
以前「晩秋のシーズナルパターン」について、書きました。今から見直すと、誤解や知識不足があります。そこで、今の時点で書ける要点をまとめました。アメリカで評価の高い、陸水学とトラウトの生態学の教科書と、私自身のミノーとシンキングペンシルでの経験、水温測定と魚探の反応、湖岸で会った方々との情報交換を土台にしています。
本題に入ります。10月から始めます。
支笏湖の水は、6月から11月までの間、3層構造をとります。冷温帯の湖の典型的な構造です。水面近くには、暖かな表水層があります。水深の深いところには、冷たい深水層があります。この2つの境界が水温躍層です。
10月中旬の支笏湖なら、こんな感じです。表水層は水温10℃以上です。水温躍層は、私が測定した経験では、水深20〜30m程度の範囲にあります。
この時期に、ボートから魚探をかけた経験が何度かあります。大きなフィッシュマークの大半は、水深20mより深いです。ブラウントラウトのランカーの大半は、水温躍層と深水層にいるようです。
ただし、一部のブラウントラウトは、昆虫を捕食するためにシャローに来ています。川や湖の魚は、リンという栄養素に飢えています。生態学者は、この状態を「リン制限」と呼んでいます。そして、湖では、リンの最も重要な補給源は、湖面に落下した昆虫です。10月は、トラウトにとって、リンの最後のかき入れ時です。そして10月は、フライフィッシングの独断場です。この時期、ミノーを投げても、体当たりしか喰らいません。昆虫を奪い合う時期です。ミノーは「邪魔者」もしくは「ライバル」にしか見られないようです。
この状況が一変するのが、水温10℃です。トラウトの生態学の教科書によると「水温10℃になると、ブラウントラウトは産卵に向けた行動を開始する」だそうです。全てのブラウントラウトが産卵行動をとる訳ではありません。産卵に向かうのは、数尾に1尾だそうです。
釣りをしていても、この「10℃」という境界線は、重要な指標です。10℃に達すると、途端に、ミノーに反応します。ただし、反応は渋いです。典型的な反応の1つは、重量感を感じるショートバイトです。また、ミノーが、あたかも漂流してる流木に根掛かりしたように止まります。そのままゆっくりミノーが沖に動いて行き、「はっ?魚っ?マジッ?乗った!デカい!」と思った瞬間に、外れます。とにかく、ショートバイトや浅いバイトが多いです。水温10℃になると「今の魚、絶対にデカかった!」と悔やむ反応が、突然に始まり、増えます。「今の、デカかった!」とハラハラドキドキできる瞬間が、この晩秋のハイシーズンの特徴です。他の時期では、この興奮は味わえません。
釣果を決めるのは「ブラウントラウトの活性が高い、比較的限られたタイミングに遭遇すること」だと感じます。「そのタイミングはいつか?」なんて、誰にも分かりません。技量より運です。夜釣りの人達の場合、車中泊で連泊して叩いている方もいます。たしかに、その価値があると思います。
こうした経験や見聞きを沢山してきました。この経験から「支笏湖では、水温10℃まで低下すると、シャローでの、産卵前の荒食いが始まり、ハイシーズンに入る」という判断は、100%間違いないと思います。
誰もが知りたいのは「ハイシーズンはいつ始まるか?」です。この疑問に対する、私の回答は「さっぱり分からない」です。シーズンインが早い年は、紅葉が残っている10月下旬に、雪も降ってないのに10℃に突入します。シーズンインが遅い年は、雪がかなり降った後、11月中旬過ぎにようやく10℃に突入します。シーズン開始のタイミングには、1ヶ月近い幅があります。
私が若い方にアドバイスできることは
「地道に通い、水温測って、のんびり待つ」だけです。私は、今年は真面目に、9月上旬から水温を測って、推移を観察しています。しかし、今の時点でも、明確な予想が立ちません。結局、毎週 測りに行くしかありません。繰り返します。
「支笏湖の晩秋のハイシーズン突入は、事前の予想が不可能」が特徴です。ある日、突然にやって来ます。
話題を次に進めます。ハイシーズンには「始まり」がある以上、「終わり」もあります。私はこれまで、シーズン終了に対して、しっかり調べてきませんでした。しかし、これまでの経験から、ある程度の印象はあります。以下の文章は、今の時点での試論だと思って下さい。
ブラウントラウトは、産卵前の荒食いを終えれば、産卵のために遡上します。支笏湖であれば、美笛川とオコタンペ川です。トラウトの生態学の教科書を読むと、遡上のタイミングに対する提案は、かなり混乱しています。しかし、最も広く引用されているのは、水温6〜7℃です。この水温に達すると、遡上するブラウントラウトが急増するそうです。
その結果、大半のブラウントラウトは、川に去ってしまいます。当然、シャローで荒食いしているブラウントラウトが激減することが予想されます。
ここから書く事は、まだ100%の自信をもって書けません。おそらく、この遡上の急増が、ハイシーズンの終了となるようです。これまでの経験から、水温6℃を切って、5℃台に入ると、ミノーへの反応が明確に変わります。「こいつ、絶対にデカかった!」と、心臓がドキドキするような反応が、ほぼ完全に消えます。釣れる日も、釣れない日もありますが、釣れても40cm以下という日が増えます。「シーズンが終わった...」と痛感する釣行が増えます。夜釣りの人達も、この辺りで「全く反応しない」とボヤき始め、夜釣りで賑わった支笏湖トンネルからニナル河口までの範囲で、釣り人が一気に減ります。
仮に、水温が6℃を切るのを「ハイシーズン終了」の目安とした場合、終了は12月上旬から中旬にかけて起こります。
以上から、支笏湖の晩秋のハイシーズンは「水温10℃から6℃」と考えるのが無難だと感じます。シーズン開始の「10℃」は自信があります。10年近くかけて、確認しています。しかし、シーズン終了の「6℃」は、叩き台の意見です。もう少し観察を続ける必要があります。
晩秋のハイシーズンが終わると、支笏湖は閑散とします。しかし、新しいシーズンの始まりでもあります。ハイシーズンが終わった直後に、今度は、ターンオーバーが完了します。周囲は完全な雪景色となる頃です。湖水は一様に水温4℃になります。水面から、300m以上深い最深部まで、どこでも4℃です。ブラウントラウトの立場に立てば「どの水深でも居心地は同じ」です。水温の状況は、3月下旬から4月上旬の状況に似ています。普通に「頑張って、かつ、運に恵まれれば、釣果がある」という、普段の支笏湖になります。一方で、湖岸で出会った方々の話をまとめると「12月から2月が、化け物を捕獲するチャンス」という意見も意外と多いです。私も、今シーズンは、厳寒期もしっかり試す予定です。