ミノーのただ巻き (その6) ショートバイト (キスバイト)

2014年05月31日 05:00

私は、旧有料道路での釣りが好きです。特に、2011年の春は魚影がとても濃かったです。その当時、必ず、道路の上に立って釣りをしました。強風時以外、道路から降りません。ルアーは視認性の良いカラーを選びます。もしくは背中に、蛍光イエローや蛍光オレンジのマーカーを貼っておきます。ヒットに備えて、振出タイプ(3.6m)のランディングネットを用意します。加えて、いつでも道路から湖岸に降りれるように、登山用のザイル3mにカナビラを結びつけたのを用意します。曇天だと湖面が曇り空を映すので、水面の下がほとんど見えません。絶好の旧有料道路日和は、弱いさざ波の快晴です。当時、こんなコンディションに遭遇すると、旧有料道路はブラウントラウトの水族館となりました。


道路から湖面を見下ろすようにして、偏光グラス越しに、ルアーを凝視しながら水面のすぐ下を引いてきます。すると、ブラウントラウトがルアーに反応する様子を観察できます。これが旧有料道路の魅力です。私は、当時の旧有料道路で「支笏湖のブラウントラウトはルアーをよく見切る。ほとんど見切る」ということを学びました。ヒットは、ショートバイト5回に1回程度の頻度でした。

■ ヒットの瞬間 ■

ルアーをただ巻きしている時に、いきなり重みが乗るヒットは、起きていることが簡単です。ルアーの後ろから、もしくは真下からブラウントラウトが近づき、ルアーの直前で、いきなり口を大きく開きます。テレビで見た事のある、サケの産卵シーンの映像で見たような、凄い形相で、口を目一杯開きます。そして、ルアーを口に入れると同時に口を閉じ、そのまま反転し、この瞬間から1秒程度のタイムラグの後、ロッドにいきなり重みが乗ります。

50cm以下のブラウントラウトは、凄いスピードでルアーに突っ込んでくる様を観察できます。一方、60cm以上のブラウントラウトは、いきなりルアーの真下に現れます。どのようにルアーに近づいて来たのか?、観察できたことがありません。

それから。ブラウントラウトがヒットする瞬間を観察できる機会は、ほとんどありません。ルアーに襲いかかってきたブラウントラウトの大半は、ルアーを口に入れる直前にルアーを見切るようです。多くの場合、ロッドを握る手に、ルアーにブラウントラウトが触れた感触が伝わります。「ショートバイト」とか「キスバイト」と呼ばれている現象です。旧有料道路で道路から見下ろすように釣りをすると、ショートバイトの瞬間を一部始終観察できます。

支笏湖でブラウントラウトを相手にただ巻きの釣りをすると、ロッドに伝わる感触の違いから、ショートバイトは6パターン位あることが分かります。そのうちの3種類は、旧有料道路で何度も目撃しました。この3パターンは、基本的にブラウントラウトのサイズに対応していました。

■ 70cm以上のブラウントラウト ■

このサイズは、ルアーの後ろからやって来るより、真下からやって来る場合が多いです。水面直下のルアーを凝視しながら引いてくると、いきなり真下にブラウントラウトが現れ、その次の瞬間、ルアーの真下で大きく口を開いて、口を閉じながら反転して潜っていきます。明らかに「よし乗った!」と思うのですが、ほとんどの場合、ルアーを飲み込む直前に、ほんのわずかに顔をそらして反転し、湖水の深みに戻っていきます。飲み込む直前に、ルアーを餌ではないと見切るようです。この見切られ方の場合、反転する際に、魚体の側面にルアーが触れ、ルアーが「ヌルッ」と舐められたような、もしくはルアーが優しく撫でられたような感触がロッドに伝わることがたまにあります。しかし3回に2回の頻度で、ルアーが魚体に触れることなく (数cmのすれすれのところを反転します)、ロッドには何も感触が伝わらずに終わります。この場合、ブラウントラウトの姿を観察できていなければ、ルアーにブラウントラウトが反応したことすら気付きません。このサイズの場合、反転する際、ロッドには何も伝わらないのに、ルアーの位置で水面がこんもり盛り上がって、ゆったりと波紋が湖面に広がる場合があります。また、反転したブラウントラウトの尾びれが水面上に現れ、その直後に、尾ビレで叩かれたルアーが水面からピョコンッと飛び出すこともあります。

■ 50cm台のブラウントラウト ■

50cm台のブラウントラウトでよく起こるのは、数秒間隔で、ロッドに「ツンッ……ツンッ……ツンッ」と、前アタリのような鋭い感触が伝わるバイトです。この現象はちょっと複雑です。

このサイズのブラウントラウトの場合、よく起こるのが、数m以上、ルアーの後ろを追尾してくることです。距離を詰めたり離れたり、ルアーの横に移動したりします。明らかに、ルアーを咥えるかどうか?悩んでいる様子です。こんな個体の一部は、恐る恐る、ルアーのテール部分を口先でつまんできます。つまんだ直後に、餌ではなくルアーだと知るようです。突然、全身をつかって、激しく首振りをし、ルアーを振り回して、口の中のテールフックを外そうとします。必死で暴れている様子が偏光グラス越しに観察できます。しかし、ルアーと並走する速度でブラウントラウト自体も移動してくるので、これほど激しく暴れているのに、ほとんどロッドには何も伝わりません。首振り5回とか10回に1回程度の頻度で、ロッドに「ツンッ」という鋭い感触が伝わります。リールをそのまま巻き続けると、そのまま重みが乗ってヒットする場合もあれば、首振りの結果 ルアーが外れてブラウントラウトが湖水の深みに消えていく場合もあります。

という訳で、このタイプのショートバイトの要点は、これは実際にはショートバイトではなく、ブラウントラウトがルアーを口から外そうとしている行為だということです。

■ 40cm台のブラウントラウト ■

40cm台のブラウントラウトは、ブレイクの陰から、すごいスピードでルアーに一直線に向かってくることが多いです。ヒットする場合は、そのままルアーを咥えて反転します。しかし、やはり直前に餌ではないと見切るのか、口を開けない場合も多いです。しかし、すごいスピードでルアーに向かっているので、ルアーを避けれず、口を閉じたままのブラウントラウトの口先がルアーにぶつかり、その後に反転していきます。この時、ロッドに「コッン ! 」という明瞭な感触が伝わります。支笏湖でシンキングペンシルを使って釣りをしていると、このタイプのショートバイトが頻発します。

まとめ

3つ書きます。1つめ。2011年の春に、数十回ものショートバイトを目視で観察した結果、以下のように理解するようになりました。ショートバイトの大半は、ブラウントラウトがルアーを丸呑みしようと襲いかかった際、その直前でルアーが餌でないことに気付き、一瞬の判断でルアーを口に入れないように対処する時に起こります。この際、ルアーに向かって鋭いスピードで泳いで来たので、どうしても、ルアーが魚体の一部に触れることが多いです。この時、釣り人のロッドを握る手に、魚が触れた感覚が伝わります。これが、ショートバイトの正体のようです。

2つめ。ショートバイトでロッドに伝わる感覚の強さは、ブラウントラウトのサイズと反比例します。40cm台の小さいサイズでは、明瞭にコンッと強いショートバイトが伝わります。逆に、70cm程度もしくはそれ以上ありそうなサイズは、ほんの微かに触れてくるような感触が伝わります。

3つめ。追記として書きます。10年近く前、シーバスライブ
http://www.seabasslive.com
のDVDを全巻揃えて見ましたが、シーバスのショートバイトとブラウントラウトのショートバイトは、若干異なるように感じます。ただし、共通していることがあります。シーバスライブは「ルアーを投げて巻いて、何の反応もないままピックアップすることになっても、実際には、その間に、沢山のシーバスに反応され、見切られている」ことを教えてくれました。旧有料道路で偏光グラス越しに観察している感じだと、この点は、支笏湖のブラウントラウトの釣りも同様であると感じます。


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