ミノーのただ巻き (その7) 付着藻類と透明度

2014年05月31日 06:00

この書き込みの内容は、私のように、3〜4月の日中にミノーをチョイ投げして、ただ巻きやトゥイッチでブレイクのショルダーに潜んでいるブラウントラウトを狙う場合、ほぼ間違いなく、起こると思います。しかし、ジグミノーやシンキングペンシルで沖を攻めたり、メタルジグやスプーンでディープを攻めたり、昆虫を模したトップウォーターを使った釣りでは、全く関係のない現象だと思います。

5,6年前の3月や4月、散歩感覚で南岸(美笛キャンプ場の入り口から虹鱒橋までの間)を、毎回2km程度の範囲を釣り歩く...という課題を自分に与えて、この単純作業を繰り返しました。作業は簡単です。7,8m程度の間隔で、ルアーを投げて、着水したら一呼吸おいて、そのままただ巻きします。これを延々繰り返しました。この時に、あることに気付きました。

当時は、快晴・無風・べた凪の真っ昼間でも、50cm台や60cm台のブラウントラウトがルアーを丸呑みするようなヒットが、1日に1〜2回程度の頻度で起こりました。そんな中、こんな安直なヒットがある場所には、共通する2つの特徴があることに気付きました。第一に、下の写真の岩のように、湖岸からブレイクに至るシャローの岩の全てに、付着藻類が全くついていません。


第二に、こうしたエリアは必ず、湖水の透明度が高かったです。「これぞ支笏湖の水だ!」と思うような無色透明の透き通った湖水のエリアで、単純なヒットがあります。


一方、フッキングに至らないショートバイトが頻発するのは、下の写真のように、シャローの岩が薄茶色の付着藻類に覆われているエリアでした。


付着生類の繁茂が進んだエリアでは、付着藻類は、その中に気泡を含むようになります。


さらに繁茂が進むと、岩の外観がぬいぐるみのテディベアのようになります。


こんな状態になった付着藻類に対し、強風が吹くと、付着藻類は剥離し、湖面を漂ったり、


湖岸に打ち寄せられます。


付着藻類が繁茂したり、剥離した付着藻類が漂っているエリアの多くは、湖水が淡く白濁していることが多いです (ただし、白濁といっても、偏光グラスを使ってかろうじて見分けられる程度の淡さです)。こうした場所では、ほとんどの場合、フッキングしないショートバイトばかりが起きます。私が試した範囲では、よほど波が高くないと、こうしたエリアではフッキングに至りません。

こうしたことに気付いた当時「これは本当か?」という強い疑問を感じました。なにせ「何故これが起こるのか?」さっぱり理解できませんでした。こうした強い疑念があったため、確認作業だけはしっかり行いました。2年かけて10回近く、付着藻類があるエリアと、その近くの付着藻類がないエリアで、それぞれ2時間程度の釣りをし、ルアーへの反応を比較しました。その全ての釣行で、上に書いた傾向が成立していました。明らかに、付着藻類がない、透明度の高いエリアでよくフッキングします。しかも、ルアーを丸呑みします。

それ以来、釣り場に着くと、まず付着藻類の有無と湖水の透明度の観察をします。守るべきルールは簡単で
教訓:弱いさざ波やべた凪の時は、付着藻類が繁茂したエリア・湖水の透明度が低いエリアには絶対に入らない。
です。付着藻類が繁茂しているエリアのべた凪やさざ波程度の条件では「あともう少しでフッキングしていたはずなのに!」と悔しい思いをすることが、頻発します。その上、ショートバイトの後に、ルアーから去って行くブラウントラウトの後ろ姿が、偏光グラス越しに見えることが多いです。そこで「今度こそ!」と頭に血が上り、不必要に時間を費やし、悪循環に陥ります。今でも、この失敗を年に何度かやってしまいます。

ここで、付着藻類の簡単な基礎知識をまとめておきます。付着藻類は、主にケイ藻という種類の植物プランクトンが構成します。付着藻類が付いた岩はヌルヌルして滑りやすいですが、これはケイ藻の分泌物が原因だそうです。この分泌物が故に、ケイ藻は岩の表面にとどまり続けられます。付着藻類の生態学を勉強すると、そこは、シャローの岩の表面に成立する、様々な藻類や微生物からなる湖中のミクロな森林であることを理解できます。付着藻類は、水生昆虫やスジエビ、雑食性の魚類の餌として機能します。清流なら、アユの大切な餌です。川でも湖でも、付着藻類は魚類の生態系を支える大切な土台であることが理解できます。付着藻類は「繁茂と剥離」を繰り返します。湖では、強い波が生じると、付着藻類は岩からはがれ去ります。その後、むき出しの裸になった岩の表面に、再度、付着藻類の繁茂が進行していきます (短期的な増減のサイクル)。繁茂の進行は、水温が高いほど早いです。そこで、付着藻類は春から秋に向けて増え、冬期に減少します (長期的な増減のサイクル)。こうした短期や長期のサイクルがあるため、春の支笏湖の湖岸は、付着藻類がある場所とない場所が混在します。

以下、私が支笏湖で観察した傾向を書きます。

南岸や西岸、東岸では、冬期の強い北西風によって付着藻類は洗い流され、2〜3月には、大半のエリアで付着藻類はなく、岩はむき出しの裸状態にあります。しかし、3月から5月に向けて、水温の上昇とともに、付着藻類の繁茂が進みます。繁茂の進行は、年によって早い遅いがあります。それに加えて、繁茂が早い場所と遅い場所があります。特に4月中旬以降のミノーイングでは、付着藻類のないエリアを探して釣りをすることで、釣果が確実に上がります。

一方 北岸は、とりわけ恵庭岳の麓の湖岸 (オコタンペ川河口〜ポロピナイ) では、冬期間も付着藻類が繁茂していることが多いようです。これは、北岸が太陽光を十分に受けやすい立地と、恵庭岳の地熱が影響しているからだと思われます。ミノーで釣りをする場合、オコタンで特に付着藻類の影響を受けます。GW直前に開通した時点で、すでに付着藻類が繁茂しきり、剥離した付着藻類が漂っている年がたまにあります。こうなると、開通直後のオコタンでも、手も足も出ない経験を何度かしました。


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